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弁護士の眼

法に従い、法に守られる経営を

| 2012.09.21 金曜日 | 弁護士の眼(近森土雄) |

以下の記事は「MNO Office Letter 2012年6月号Vol.77」(発行人株式会社成岡マネジメントオフィス)に掲載された私の記事「弁護士の視点 №12」を加筆修正して、再掲したものです。

 企業経営にコンプライアンス(法律順守)が求められてから永く
なりますが、最近でも企業が事故や紛争に巻き込まれ、不祥事に至
る事態はあとを絶ちません。
 事前に法律を確認し、真面目に経営努力されても、予想外のトラ
ブルが発生します。適切な対応を誤り、早期の解決ができないで、
裁判になることもあります。裁判では必ずしも事実が正しく認定さ
れるとは限らず、納得のいかない結論が裁判所から出されることも
あります。
 ではどうしたらいいか。できるだけ早く弁護士に相談するよう日
頃から心がけましょう。事業計画を立てたり、新たな事業に取り組
むだけでなく、クレーム処理などを日常的に相談されることです。
弁護士にまで相談する案件か迷われるでしょうが、法律が頻繁に改
正されたり、新たな法律が制定されたり、法律相互の関係が複雑化
した現代では、些細な事柄と判断したことが思いがけず重大な事態
を引き起こすことがあります。
 弁護士の意見で、ひとつの法律にとらわれない、より基本的な観
点から法律問題に気づかれることがあります。予め法的問題の所在
を知りながら事業に取り組むことができれば、紛争を予防し、損害
を予測できるなど、法的リスクの管理がしやすくなります。弁護士
の意見は経営者とは見方が異なるために、敬遠したくなりますが、
手間を惜しまず、議論を恐れず、相談されることで、法に守られる
より息の長い経営が可能になります。

近森土雄


不服申立て

| 2012.07.31 火曜日 | 弁護士の眼(大和克裕) |

 現在ロンドンオリンピックの真っ最中です。日本選手を応援しながらテレビを見ていますが、ロンドンとは時差が8時間らしいので、ロンドンの夕方7時は日本では夜中の3時になり、なかなか最後まで見ることはできません。
 今日も、体操男子団体決勝を見ていて、最終種目が終了して4位になったところで力尽きて寝ました。ところが朝起きてテレビを見ると、抗議が認められて点数が訂正され、銀メダルになったと報道されていました。
 また、前日には柔道の旗判定が審判委員の異議によって変更されたことが大きな話題になっていました。
 考えてみますと、最近、一度審判が行ったジャッジが覆されるケースが増えたように思えます。もともとNFL(アメリカのプロアメフト)や大相撲などでは ビデオ判定が導入されていましたが、ここ10年のうちにテニスやプロ野球、ラグビー、フィギュアスケート、ボクシングなど様々な協議で導入されています。 サッカーではユーロ2012での誤審をきっかけにゴールの判断を機械で行うことが検討されたとのことです。

 裁判の世界では、三審制という原則があることは皆さんご存じだと思います。判決がおかしいと思う場合には2回まで上級審に不服申立てができ、判決が間違っていれば修正してもらえるという制度です。
 確かに形式的には同一事件で3回裁判が受けられるようにはなっているのですが、実質的にはほとんどの場合3回も裁判は受けられません。

 まず、上告審は憲法違反などの特別なケース以外は審理の対象としません。不服申立ての大多数である「事実認定の間違い」は審理対象としませんので、不服の内容を審理してもらう前に門前払いにされます。ですので、実質的審理をするのは2回だけといっていいです。

 次に裁判は大きく分けて民事事件と刑事事件とがありますが、刑事事件は1回しか実質的審理がないと言っても過言ではないと思います。
 刑事事件の控訴審では第一審の時点で提出できた証拠はもはや提出できません。不服申立の根拠となる資料であっても、第一審の時点で存在していた証拠は原則として提出できません。
 また、裁判官も第一審の判決を訂正する必要があるかどうかを判断基準とし、自分がどのくらいの刑罰が妥当と思うのかの観点から判断をしません。
 例えば懲役3年の判決が第一審で下されたとします。被告人が刑が重いとして控訴した場合、仮に控訴審の裁判官が「2年8月ぐらいが妥当かな」と思ったと しても、「3年はちょっと重いけど、重すぎるとはいえない」と判断すれば、控訴は棄却されます。2年8月との判決を下さないのです。

 これに対し、民事事件では控訴審で新しい証拠を出すことに原則として制限はありませんし、「1000万円支払え」との判決が第一審で下された場合に、「800万円が妥当」だと控訴審の裁判官と思えば「800万円支払え」と判決します。
 ですので、実質的にも2回審理をしてくれるといえます。

 このように、刑事事件の控訴審で判断が変わることはほとんどありませんが、民事事件ではしばしば見られます。このような観点から裁判の報道を見られてもおもしろいかもしれません。

  大和克裕


配偶者の素行が怪しいときの対処法

| 2012.07.19 木曜日 | 弁護士の眼(竹田真理) |

弁護士をやっておりますと、夫婦の離婚相談や恋人間でのトラブルに関する相談を受けることがあります。その中でも普遍的にある相談は浮気に関してです。

最近ではSNSをきっかけとした浮気が増えてきているように感じます。古い友人とSNSで久しぶりにつながって浮気に発展することもあれば、全然知らない 人とSNSで盛り上がった後にオフ会で実際会ってみてさらに盛り上がって浮気に発展して・・・、など、きっかけは様々なようですが。
 さて、パートナーの浮気が発覚した場合、パートナーとの関係をどうするかということはもちろん重要ですが、婚姻しているご夫婦の場合、パートナーと浮気 をしていた相手に慰謝料や謝罪を求めることが多々あります。ただ、SNSをきっかけとして発展した浮気は、浮気相手の素性が分かりにくいという傾向があり ます。
 SNSの場合、パートナーと同じ職場の人、取引先の人、行きつけのお店の人、などという通常の行動パターンから全く外れた圏内にいる人を浮気相手とする ことが可能です。また、浮気している当事者同士、自分の素性をどこまで明らかにしているかはっきりしないこともあります。極端な話、パートナーは浮気相手 から偽名を告げられたり年齢を詐称されている可能性もあるのです。
 いずれにせよ決定的な浮気の現場を押さえることになれば、調査会社に素行調査を依頼することになるでしょう。調査員がパートナーの浮気の現場を確認した後に、浮気相手を尾行して素性を探ることになります。
ただ、最近では昔と違ってマンションに住んでおられる方も多いので、マンションに入るところまでは確認できても、その後どの部屋に入ったかまでを見届けることは難しいこともあるようです(エレベーターにくっついて乗ってしまうと面が割れてしまいますので)。
このような場合、一人の調査員がエレベーターの停止階を見ておき、裏へ回った他の調査員が、どこの窓に明かりがつくかを見る、という方法を取ることが多いようですが、窓など見えないマンションもたくさんありますので、成功率が高いとは言えないようです。
そういう場合には、再び相手方が出てくるのを待ち、勤務先を確認して、そこから相手方の名前などを割り出す手はずをとることが多いようです。
 そうなってくると、調査の費用が高額になってしまいかねませんね。慰謝料額より調査費用の方が高額になるかもしれません。
 少しでも調査費用を低く抑えるためには、浮気に関する情報をできるだけ詳しく収集しておくことです。調査員が全く浮気相手の情報がないまま尾行するよりも少しでも前知識があった方が尾行しやすいからです。 
パートナーが浮気をしているのではないかと疑うような事情があれば、まずは騒がず、素知らぬ顔をして情報を取ることをお勧めします。
たとえば、デート予定日、浮気相手の名前、電話番号、住所、就業先、を収集することをお勧めします。浮気相手の電話番号はわからなくても、メールアドレス に生年月日などを入れていることもありますし、メール内容から浮気相手の職種や就業先がなんとなくわかってくることもあります。携帯電話番号が分かれば、 携帯電話会社に登録している氏名と住所を割り出すことが可能です。
 浮気を疑っても、浮気の証拠や浮気相手の素性が判明するまでは、決してパートナーを問い詰めないでください。証拠をつかんでいなければ、白を切られ携帯 電話のロックがかけられたりメールを削除されたりして、証拠集めが難しくなります。それだけでなく、調査会社に依頼をして、尾行を警戒され、うまく証拠を 得られないことになってしまいかねません。
 浮気を疑ってカーッとなってしまうことは厳禁です。くれぐれも情報を逃してしまわないよう気を付けてください。

 竹田真理


ヤミ金融に気をつけて

| 2012.06.20 水曜日 | 弁護士の眼(近森土雄) |

以下の記事は「MNO Office Letter 2012年5月号Vol.76」(発行人株式会社成岡マネジメントオフィス)に掲載された私の記事「弁護士の視点 №11」を加筆修正して、再掲したものです。

 ヤミ金融という言葉はニュースによく出てきますが、ヤミ金業者
は法定の登録(知事か総理大臣に)をせず貸金業を営んでいます。
業者によりますが、金利は1週間で元金と同額というひどい例もあ
り出資法などに違反する高利の犯罪行為です。2万円から3万円ほ
どの少額でも需要があります。契約書はなく、電話で申し込むと銀
行口座にお金が振り込まれてきます。
 高金利と分っていても、すぐに返済できる当座のお金と思って申
し込むようですが、返済期限の延長が認められ、延長の度に利息を
払わされるので、返済額は膨れ上がります。指定された銀行口座に
振り込み入金して返済しますが、借名口座であるため振込人と名義
人が違います。すべてが口約束です。長引くと当然、返済ができな
くなり、電話での取り立てが始まります。「借りた金を返せ」、「約束
を守れ」、「窃盗」などと言われ、「ビラを貼って家族や近所に知ら
せてやる」などと言われると、家族など身近な人に相談ができず、
身動きできなくなるまで支払い続けることになります。
 言えない使途のお金を借りることもあり相談が遅れるようです。
約束を守るという素朴な倫理観からつい元金だけでも返そうと思っ
てしまいますが、元金額は不明になります。最高裁判所は公序良俗
に違反する無効の契約で、ヤミ金業者に金銭を返済する義務はまっ
たくないと明言しています。
 法律上の結論は明瞭ですが、ヤミ金は人の心の隙間をついた犯罪
です。くれぐれもお気をつけください。

近森土雄


法曹人口を決めるのは誰か。

| 2012.03.22 木曜日 | 弁護士の眼(大和克裕) |

 最近、弁護士業界では、日弁連会長選挙の争点となったことや日弁連が3月に提言を出したことから、またもや司法試験合格者数が話題となっています。
 弁護士の間では年間1000人か1500人に制限せよという意見が多いようですが、弁護士以外の方からは、「適正な法曹人口は市場における需給関係に よって決まるから、何人でも合格させて競争させたらいい。予め合格者数を決めるべきではない。」という意見がけっこう強いです。

 確かに、司法試験が単なる資格試験であり、試験において発揮された能力の絶対値にて法曹資格が与えられるのであれば、合格者数を予め定めることは不合理です。
 市場における需給関係で法曹人口が決まるのであれば法曹人口の目標値を定めることは無意味です。
 そもそも競争原理で市場の需給関係が決まるのであれば、司法試験そのものが不要という結論になります。実際に規制改革会議では、ある委員からそのような発言がされていました。

 しかし、戦後60年以上にわたって連綿と、法務省は予め決められた司法試験合格者数に従って合格者を決定し、法曹人口の総量は決められてきました。また 司法制度改革にあたっても、司法制度改革審議会や閣議決定は法曹人口や司法試験合格者数について明確な目標値を定め、政府がこれらの数を決めるという姿勢 を崩していません。
 つまり、政府は、司法試験は単なる資格試験ではなく、法曹人口は競争原理で決まるわけではないことを明言しているのです。

 これは、法曹人口や司法試験合格者数の決定は、弁護士だけでなく裁判官や検察官も含め司法権という国家権力を担う者について、どの程度の能力を持った人材をどのくらいの人数携わらせるかということであり、重要な国家政策であるという認識を政府がもっているからです。
 したがって、法曹人口や司法試験合格者数というものは、政府の方針によって政策的に決まるものであり、市場における需給関係や試験で発揮された能力の絶対値によって決まるものではありません。

 これに対して、法曹三者のうち、裁判という公的業務のみを行う裁判官及び検察官と、依頼者の私的利益の保護を図る弁護士を分離して考えるべきだという方がいます。
 しかし、このような主張をされる方は、どうも司法権の行使=裁判権の行使という捉え方しかしていないようです。
 裁判はあくまでも司法権を行使して法的紛争を解決するための一手段にすぎません。手術が治療の一手段にすぎないのと同様です。
 弁護士が法律相談でアドバイスをして紛争を解決すること、さらには契約書等をチェックして紛争を未然に防ぐことも、法的紛争の解決という司法権の行使の一手段なのです。

大和克裕


消えた年金記録と第三者委員会の役割

| 2012.03.12 月曜日 | 弁護士の眼(近森土雄) |

以下の記事は「MNO Office Letter 2012年2月号Vol.73」(発行人株式会社成岡マネジメントオフィス)に掲載された私の記事「弁護士の視点 №8」を加筆修正して、再掲したものです。

旧正月を迎え、明るいコラムにしたいので、新しい法制度の成功例をご紹介します。
 その一つとして、年金記録確認第三者委員会の設置があります。数年前に「消えた年金記録」問題が明るみになり、2007年に総務省に設置されました。記 録を管理する厚労省は信用できないとされ、外部に審査機関関を設けました。弁護士や社会保険労務士などの専門家が委員となり、独立・公平な審理を目指しま した。この間に20万件を超える申立てがあり、結論が出されました。
 消えた年金問題は、厚生年金加入者が社会保険料相当分を給与から源泉徴収されていながら、雇用主が徴収したお金を社会保険庁に納付していなかったことな どから生じています。加入者である民間人は国のすることなので、当然に納付した社会保険料を管理してくれていると思ったら、大違い。納付も、加入時期の確 認も企業任せで、実態と食い違っていました。
 この新制度によって、以前は救済されなかった障害年金受給者が受給できる可能性が生まれました。たとえば、退職後に事故に遭うなど身体の障害で働けなく なっても、加入期間など一定の要件を満たしていれば、障害年金がもらえます。ところが、たった1月分でも加入時期の記録に誤りがあると受給できません。そ のうえ、記録の誤りが発見されても、社会保険料の納付期限が時効(2年)になっていれば、雇用主は不払にした保険料の支払いができません。その結果、若く して不幸にも障害を負った加入者で要件を満たす保険料相当額を給与から天引きされていたケースでも、企業が納付していなかったために障害年金が受給できま せんでした。最近まで加入者に加入状況を知らされる機会が限られていたのに、
おかしい話です。
 このような不合理な法律の存在は、憲法の平等原則違反として裁判で争うしかありませんでした。しかし、第三者委員会の提案で、第三者委員会のあっせんが あれば救済されるようになりました。厚生年金保険の保険納付及び保険料の納付の特例等に関する法律の制定です。必要な法律が整備されて、制度がより公平に 近づいた例です。

近森土雄


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