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弁護士の眼

消えた年金記録と第三者委員会の役割

| 2012.03.12 月曜日 | 弁護士の眼(近森土雄) |

以下の記事は「MNO Office Letter 2012年2月号Vol.73」(発行人株式会社成岡マネジメントオフィス)に掲載された私の記事「弁護士の視点 №8」を加筆修正して、再掲したものです。

旧正月を迎え、明るいコラムにしたいので、新しい法制度の成功例をご紹介します。
 その一つとして、年金記録確認第三者委員会の設置があります。数年前に「消えた年金記録」問題が明るみになり、2007年に総務省に設置されました。記 録を管理する厚労省は信用できないとされ、外部に審査機関関を設けました。弁護士や社会保険労務士などの専門家が委員となり、独立・公平な審理を目指しま した。この間に20万件を超える申立てがあり、結論が出されました。
 消えた年金問題は、厚生年金加入者が社会保険料相当分を給与から源泉徴収されていながら、雇用主が徴収したお金を社会保険庁に納付していなかったことな どから生じています。加入者である民間人は国のすることなので、当然に納付した社会保険料を管理してくれていると思ったら、大違い。納付も、加入時期の確 認も企業任せで、実態と食い違っていました。
 この新制度によって、以前は救済されなかった障害年金受給者が受給できる可能性が生まれました。たとえば、退職後に事故に遭うなど身体の障害で働けなく なっても、加入期間など一定の要件を満たしていれば、障害年金がもらえます。ところが、たった1月分でも加入時期の記録に誤りがあると受給できません。そ のうえ、記録の誤りが発見されても、社会保険料の納付期限が時効(2年)になっていれば、雇用主は不払にした保険料の支払いができません。その結果、若く して不幸にも障害を負った加入者で要件を満たす保険料相当額を給与から天引きされていたケースでも、企業が納付していなかったために障害年金が受給できま せんでした。最近まで加入者に加入状況を知らされる機会が限られていたのに、
おかしい話です。
 このような不合理な法律の存在は、憲法の平等原則違反として裁判で争うしかありませんでした。しかし、第三者委員会の提案で、第三者委員会のあっせんが あれば救済されるようになりました。厚生年金保険の保険納付及び保険料の納付の特例等に関する法律の制定です。必要な法律が整備されて、制度がより公平に 近づいた例です。

近森土雄


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