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弁護士の眼

維新版・船中八策の真の危うさ

| 2012.02.20 月曜日 | 弁護士の眼(大和克裕) |

まず、以下の意見は大和個人の意見であって、当事務所及び当事務所の他の弁護士の意見ではないことを予めお断りします。

 

 橋下氏が率いる大阪維新の会の次期衆院選公約として骨子が発表された「維新版・船中八策」ですが、その過激な内容が話題となっています。首相公選制、参 議院廃止、国民総背番号制など、一昔前の参院選比例代表制で泡沫政党が主張していた政策とほぼ同じです。言い出したのが大阪維新の会でなければマスコミも 放置していたのではないでしょうか。
 この維新版・船中八策に対するマスコミや政治家、有識者のコメントを見ますと、橋下氏に対する個人攻撃から実現可能性に対する論評まで、過激さに比例するかのように百論続出です。

 しかし、私はこの有識者のコメントにこそ、維新版・船中八策の真の危うさが潜んでいるのではないかと思うのです。

 これらのコメントの論調を見ますと、「首相公選制や参議院廃止は憲法改正をしなければできないんだから、実現は困難だ」という点では一致しているようで す。そのため、「また橋下がマスコミに取り上げてもらおうと思って、現実性のない花火を打ち上げている」と思っている節がありありと見えます。
 その前提には「憲法改正なんて不可能だ」という戦後60年以上積み上げられた経験則がありますが、私にはどうもその経験則に捕らわれすぎているように思えます。

 先日、大阪の選挙区で次期衆院選で維新の会と公明党が選挙協力する旨の報道がなされました。
 公明党に限らずどの政党でも、可能ならば首相を輩出し内閣を組織したいと思っているはずです。しかし、今の党勢や選挙制度で大政党以外の政党から首相を出すのはほぼ不可能といってよいのではないでしょうか?
 でも首相公選制が導入されるとぐっと公明党などの政党から首相を出せる可能性が高まります。他の党より人気のある候補さえ出せれば首相選挙に勝てるので す。熱狂的な人気を誇る橋下氏と組めればより可能性は高まるでしょう。橋下氏が深謀遠慮によって自身が首相に立候補しない可能性も十分にありますから。
 そうすると公明党を含め、大阪維新の会に群がる政党が首相公選制に賛成し、賛成勢力が両院で3分の2以上を取る可能性がないとは言えません。

 絵空事かもしれません。しかし、憲法改正なんて無理だという先入観で楽観視していると、気づいた時には手遅れとなってしまっている。

 それが今回の維新版・船中八策に潜む真の危うさではないかと私は思います。

 大和克裕


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