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弁護士の眼

法律の誤解?個人情報の開示請求

| 2012.02.26 日曜日 | 弁護士の眼(近森土雄) |

以下の記事は「MNO Office Letter 2011年11月号Vol.70」(発行人株式会社成岡マネジメントオフィス)に掲載された私の記事「弁護士の視点 №5」を加筆修正して、再掲したものです。

平成15年に、個人情報の保護に関する法律ができてから、個人情報という言葉は日常用語としてすっかり定着した感があります。しかし、法律家からすると誤解されて使われることが多い言葉です。
例えば、同法25条は、「個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法 により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。」としています。この規定を読むと、提供した個人情報の開示請求権が個人に認められてい ると誤解(?)する人は多いと思います。
しかし、否定した裁判があります(東京地裁平成19年6月27日判決)。この裁判は、受診した眼科医に対して患者が診療録(カルテ)の開示を求めたもので すが、裁判所は同法による開示義務は行政に対する公法上の義務であるが、私法上の義務ではないと判断して、裁判による開示請求を認めませんでした。
この裁判はそのまま確定したために、高等裁判所、最高裁判所の判断は出ていません。しかし、同法は個人の開示請求権を認めているとする立場からの有力な批判があります。
法律があっても、その解釈が確定していない身近な例を挙げてみました。なお、行政機関や独立行政法人(国立大学など)に対しては、別の法律があります(行 政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律)。そこでは、保有する個人情報の開示を請求する権利 が個人にあることが、【開示請求権】という標題の条文で明確に認められています。
同条文では、「何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる。」(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項)と明示しています。

近森土雄


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